外国語DTPの注意点
☞ 翻訳後の文字数
一般的に日本語から他言語への翻訳後は、文字ボリュームが増加するので増加分を考慮して外国語のDTP編集を行います。
日本語から中国語では、2割減、英語2割増、英語からフランス語、ドイツ語では2〜3割増、英語からロシア語で4〜5割増を目安として考えます。
また、日本語から中国語への翻訳では、文字数が減少するので、日本語よりやや大きいフォントを使用します。
表の列幅や画像のキャプションに十分なスペースを設けたり、操作手順と図版が離れないように段落書式の設定を行ったりします。
☞ ハイフネーション(単語の中途での改行)
ハイフネーション (hyphenation) とは、単語を途中で区切ってハイフン(-)を挿入することで、主に印刷物や文章の視認性や整形を整えるために使われる技術やルールのことを指します。日本語では「ハイフン分割」とも呼ばれます。
マニュアルの本文は、箱組/ラグ組にかかわらずハイフネーション(単語の途中での改行)を行います。
そうすることで均一に整って読みやすくなります。
ハイフネーションをしないと、箱組では単語間が不自然に空いたり、ラグ組では右端が不恰好に凸凹したりと見苦しくなります。
組幅が狭い場合や、単語が長いドイツ語・ロシア語などの場合は特に顕著です。
ハイフネーション (Hyphenation) は、単語や文章を適切な位置で切り分け、改行を行うための処理方法です。ハイフネーションによって、行末で単語が切れた際に、文字間隔を均等にしたり、見栄えをよくしたりすることができます。
ハイフネーションは、印刷物のレイアウトやデザインにおいて重要な要素となっています。特に、多くのテキストが含まれる文書や書籍においては、適切なハイフネーションが行われていることが、読みやすさや視認性を向上させるために重要です。
ハイフネーションは、単語の分割方法によって、いくつかの種類に分けることができます。たとえば、言語によって違いがありますが、一般的に以下のような方法があります。
ルールベースのハイフネーション
ルールベースのハイフネーションは、単語を分割するための規則を事前に設定しておく方法です。言語ごとに異なる分割ルールを適用し、単語を分割します。
辞書ベースのハイフネーション
辞書ベースのハイフネーションは、分割対象の単語を事前に用意した辞書と照合することで、分割位置を決定する方法です。辞書に登録されている単語は、分割対象のテキストに含まれるかどうかを判断することで、適切な分割位置を決定します。
混合ハイフネーション
混合ハイフネーションは、ルールベースのハイフネーションと辞書ベースのハイフネーションを組み合わせた方法です。辞書に登録されている単語は辞書ベースで分割し、それ以外の単語はルールベースで分割するという手法をとります。
ハイフネーションによって、適切な単語の分割と行の改行が行われることで、読みやすい印刷物や文書を作成することができます。しかし、ルールベースのハイフ
☞ イラストなど画像のキャプション(画像に付帯する短い説明文)
イラストなど画像のキャプションは、「Illustrator」などのデータ上ではなく「InDesign」上に配置します。
翻訳時に本文と一括で翻訳手配が進行でき、かつ言語ごとに「Illustrator」上で翻訳テキストの加工をする手間も省くことができます。
☞ 2バイト文字(全角文字)の不使用
日本語以外の環境下で文字化けが起こり「ファイルが開かない」「イラストのリンクや相互参照が外れる」などのトラブルを防ぐため、日本語版作成時からファイル名、イラスト名、フォルダ名のみならず、段落書式・文字書式・表書式・相互参照書式・合成フォント名などの設定項目にも1バイト文字(半角文字)を使用します。
☞ ブック内の設定
段落書式やマスターページなどあらゆる設定をブック内の全ファイルで共通にしてDTP編集を行います。
章によってレイアウトが不統一になるなど、多言語のページ作成・管理をするうえで、のちのち品質・コスト面に大きな影響を及ぼすためです。
DTPにおける特殊な外国語
一般的には日本語・中国語・韓国語、英語その他ラテン文字が使用されている言語以外の言語で、通常使用する「InDesign」、「Illustrator」、「FrameMaker」では、対応が困難な言語があります。
例えば「アラビア語・ウルドゥー語・クメール語・グルジア語・タイ語・タミル語・ネパール語・ビルマ(ミャンマー)語・ヒンディー語・ヘブライ語・ペルシア語・ベンガル語・ラオ語等々」がそれにあたります。これらの文字言語をInDesign、Illustrator、FrameMaker等で編集する場合、特に注意しなければいけないのは、
1.文字化け
2.声調記号のズレ
3.改行位置の間違い
等です。言語によっては、専用のソフトウェア、あるいはプラグインを使用することで回避できます。
問題を起こしやすい言語
☞ タイ語(3バイト文字)
タイ語DTP作業においては、以下の注意事項があります。
フォントの選択
タイ語には独自の文字セットがあり、通常の欧米言語用のフォントでは正しく表示されない場合があります。そのため、タイ語DTP作業には、タイ語用のフォントを使用する必要があります。また、フォントのサイズや行間なども、タイ語に適した設定にする必要があります。
文字と声調記号が文字化けを起こしやすい。
レイアウトの設計
タイ語は、単語と単語の間にスペースを入れないため、単語の区切りが明確ではありません。そのため、タイ語DTP作業では、適切な行分割や単語の分割位置の決定が必要です。また、文字の崩れや文字の重なりが起こらないように、十分なスペースを確保する必要があります。他の言語に比べ、文字の背が高いため、行間の調整が必要です。
テキストの校正
タイ語は日本語と同様に、単語の意味が異なるときに使用する文字やトーンが異なります。そのため、タイ語DTP作業では、テキストの意味を正しく理解した上で作業を行うことが必要です。また、誤字や脱字などを防ぐため、校正作業を丁寧に行うことが重要です。
タイ語では、基本的に文章の切れめがありません。人為的に単語の切れ目で改行を入れる必要があります。タイ語を理解しないと1文字が半分に分断される可能性があります。(日本語に例えると、漢字の「へん」と「つくり」が分かれてしまうのと同じです。)
プリンターの設定
タイ語の印刷には、特別な設定が必要な場合があります。印刷前にプリンターの設定を確認し、必要に応じて設定を変更することが必要です。また、プリンターのトレイや用紙の厚み、用紙サイズなどにも注意する必要があります。
以上のように、タイ語DTP作業には、欧米言語用のDTP作業とは異なる注意事項があります。
そのため、タイ語に熟知しているDTPスタッフや翻訳者が作業にあたることが望ましいです
☞ ビルマ(ミャンマー)語
声調記号のズレを起こす言語
☞ クメール(カンボジア)語
改行位置を間違いやすい言語
☞ アラビア語に関して
・文字化け
・本の閉じ方、文字の流れの方向が、他の言語とは逆。
・日本語版・英語版InDesignでは編集できないためInDesignに中東言語専用のプラグインが必要です。
☞右から左へ表記する言語(RTL言語: Right-to-Left languages)
右から左へ表記する言語(RTL言語: Right-to-Left languages)は、主に中東や北アフリカで使われる言語が含まれます。これらの言語の中には、アラビア文字やヘブライ文字など、特定の文字体系を使用するものがあります。
アラビア語 (Arabic)
使用地域: 中東、北アフリカ、その他イスラム圏
特徴:
アラビア文字を使用。
書字方向は右から左。
多くの方言があり、地域ごとに話し言葉が異なる。
ペルシア語 (Persian / Farsi)
使用地域: イラン、アフガニスタン(ダリ語として)、タジキスタン(キリル文字を使用することもある)
特徴:
アラビア文字に似たペルシア文字を使用。
文法や語彙がアラビア語とは異なる。
ウルドゥー語 (Urdu)
使用地域: パキスタン、インド(一部地域)
特徴:
ペルシア語やアラビア語に由来する文字を使用。
詩や文学で非常に豊かな伝統を持つ。
ヘブライ語 (Hebrew)
使用地域: イスラエル、ユダヤ人コミュニティ
特徴:
ヘブライ文字を使用。
現代ヘブライ語はイスラエルの公用語。
シリア語 (Syriac)
使用地域: 中東の一部(シリア、イラク、トルコなど)
特徴:
アラム語の一種で、シリア文字を使用。
主に宗教的な文脈で使用される。
パシュトー語 (Pashto)
使用地域: アフガニスタン、パキスタン
特徴:
アラビア文字に似た文字を使用。
アフガニスタンの公用語の一つ。
クルド語 (Kurdish – Sorani)
使用地域: イラク、イラン
特徴:
アラビア文字を使用するが、方言や地域によってはラテン文字も使われる。
他の右から左に書かれるシステム
ダイビーティ文字 (Thaana script)
使用地域: モルディブ(ディベヒ語)
特徴:
独特な文字体系で右から左に書かれる。
ヌスリ文字 (N’Ko script)
使用地域: 西アフリカ(マンデ語族の一部)
特徴:
西アフリカの伝統的言語のために作られた文字体系。
混在する書字方向
一部の言語や文章では、右から左に書かれる言語と左から右に書かれる言語が混在することがあります。たとえば:
アラビア語やヘブライ語の文章内に英数字が含まれる場合。
これをサポートするために、デジタル環境では「双方向テキスト (Bi-directional Text, BiDi)」の技術が用いられる。
右から左へ書く文化的背景
これらの言語の右から左の書字方向は、古代の石碑やパピルスに書かれていた時代の伝統から来ていると言われています。右利きの人が筆記具で石や紙に書く際、文字が擦れないよう右から左へ書く習慣が定着したと考えられています。
まとめ
右から左に書かれる言語は、特に中東や北アフリカの文化と深く結びついています。それぞれの言語には独自の文字体系と豊かな歴史があります。これを理解することで、異文化への理解が深まるでしょう。