近年、多国籍の人々とコミュニケーションを取る機会が増え、コミュニケーションの橋渡しの役割を担う、通訳が必要になる場面も多くなりました。しかし「実際にどのような手法で通訳が行われるか分からない」「シーンに合った通訳手法が分からない」という方も多いのではないでしょうか。

ここでは、「同時通訳」「逐次通訳」「ウィスパリング」の違いや、それぞれの手法に適した活用場面について解説します。
また、通訳者の仕事の種類と、それぞれの場面で必要になる知識もあわせてご紹介します。
通訳の依頼を検討している方にも役立つ「通訳費用を抑えて会議を成功に導くポイント」ための参考にご覧ください。

同時通訳

「聞く」と「訳す」をほぼ同時に行う通訳手法です。
集中力が必要なことから、必要な業務時間にあわせ複数人数で担当し、およそ15分程度で交代しながら訳出します。通訳者は防音設備のあるブースの中に入り、イヤフォンを通して発言者の声を聞き、マイク機材を通して通訳します。聞き手はレシーバーなどで通訳音声を聞きます。適切な機材を使用することで、安定した通訳音声を届けることができます。

同時通訳の対応シチュエーション
国際会議などの大規模な会議や、スピーディーに会議を進行させたい場合に使われます。最近はオンライン会議に適した同時通訳システムの種類が増え、レシーバーの代わりに自身のPCやスマートフォンを使って通訳音声を聞く形式が増えています。

Zoom或いはMicrosoft Teamsを使用して同時通訳を行うこともできます。

逐次通訳

話者の発言の区切りごとに訳していく通訳手法です。
丁寧な通訳が可能なことから、同時通訳よりも正確に伝えることができます。また少人数の通訳者で対応でき、コストを抑えることができます。
話者の発言→通訳→話者の発言→通訳と、話者と通訳者が交互に話し、発言の2倍の時間がかかるため、テンポ良く進めたい会議には向きません。例えば1時間の会議時間だと、半分の時間は通訳に割かれるため、発言者の持ち時間は30分となります。

逐次通訳の対応シチュエーション
一般的な商談、社内会議、研修、ワークショップ、海外専門家との意見交換会、インタビュー対応、工場見学等幅広く活用されます。精度の高い通訳方式のため、企業間の契約交渉など、内容を正確に訳す必要がある会議などでも用いられます。

ウィスパリング通訳

通訳を必要とする1-2名のそばで、ささやくように通訳を行う手法です。
簡易機材を使用して複数名の方へ向けて通訳することが可能です。同時通訳の範疇となり、長時間の業務は複数人で担当する場合があります。

ウィスパリング通訳の対応シチュエーション
小人数の会議や、通訳を必要とする人が少ない場合によく用いられます。例えば、日本人9名と英語話者1名で会議をする場合、9 割が日本人の発言内容を理解出来るので、日本語→英語の通訳はウィスパリングの方が、効率良く進められます。英語話者の発言、つまり英語→日本語の通訳のみを、逐次通訳で対応することも可能です。

 

会議通訳

多国間対話の国際会議や商談など、ビジネスの場で行う通訳を指します。通訳市場において最も高いシェアを占め、最も高い通訳技術が必要とされます。
以下、3種類の会議通訳を紹介します。

1. サミットやシンポジウム等の国際会議での通訳
大規模なカンファレンスでの通訳業務を指します。政治家や専門家が話す内容を通訳する場面が多く、語学力に加えて高度な専門知識が求められます。重要な国際会議では、会議通訳者の中でもトップクラスの通訳者が業務にあたります。
通訳手法は「同時通訳」が最も多いですが、訳した言語からさらに他言語へ訳す「リレー通訳」をする場合もあります。

※リレー通訳とは
使用言語が3言語以上の場合に使用される通訳手法。例えば日本語・英語・韓国語を使う会議で、【日本語―英語】対応の通訳者と【日本語―韓国語】対応の通訳者が業務に当たった場合、英語の発言はまず日本語に訳出し、その日本語を聞いて韓国語に訳出され「英語→日本語→韓国語」の順で通訳が行われます。

2. 会議や商談等のビジネス通訳
企業や政府・官庁、産学官等、大小問わず様々な分野での通訳業務を指します。例えば日本と海外の議員同士の交流会や、日系企業と外資系企業の合併時の契約締結、あるいは外資系企業が行う新製品の記者発表会等、様々な場面があります。語学力はもちろん、職種や業種に応じた専門知識(専門用語、組織構造、事業の仕組みなど)が必要とされます。
通訳手法は、会議内容や人数に応じて「同時通訳」「逐次通訳」「ウィスパリング通訳」を使用します。

3. ニュースなどの放送通訳
海外のニュースを日本語に訳したり、日本語のニュースを外国語に訳したりします。事前に内容を確認した上で映像にあわせて行う「時差通訳」と、生放送の映像にあわせて行う「同時通訳」の2種類があります。
前述した国際会議での通訳やビジネス通訳と異なる点は、通訳を聞く対象が一般の視聴者という点です。正確な情報を、視聴者に分かりやすいように訳す必要があるため、情報処理能力と簡潔に表現できるスキル、また時間内に訳出を収めるスキルも必要になります。

司法通訳

外国人が関わる事件の捜査や取り調べ、裁判での通訳業務を指します。なかでも、裁判所で裁判官、検察官、弁護人、被告人や証人等の通訳をする人は「法廷通訳(人)」と呼ばれます。法廷通訳人は、裁判所が持つ通訳人候補者名簿から選任されるか、JCSのような通訳派遣会社を通じて手配されます。
裁判を起こした側と起こされた側のどちらにも偏らない、中立的な立場で訳す事が求められます。また、当然正確な通訳が求められ、特に判決に直接関わる法廷通訳の場合は、細部にまで徹底した正確性が求められます。そのため基本的に「逐次通訳」で行われます。

医療通訳

病院や調剤薬局などの医療現場で、外国人患者と医療関係者のコミュニケーションを取るための通訳です。患者の命が危険にさらされる可能性があるため、正確に症状を訳出する必要があります。そのため多くの場合「逐次通訳」が使われます。高い語学力はもちろんの事、医療の専門知識を備えることが不可欠です。また、重大な手術に立ち会う場面もあるため、大量の血や臓器をみても冷静に対応できることが求められます。

ガイド通訳

「通訳ガイド」や「通訳案内士」と呼ばれ、外国人を日本各地へ案内し、文化や伝統、生活習慣などについて外国語を使って紹介する通訳業務です。一般的な通訳と混同されがちですが「発言する内容を自分で考えなくてはならない」点が、他の通訳と性質が異なります。観光ガイドとしての役割も担うため、旅行会社と契約したり、フリーランスで直接仕事を受けたりします。