近年、多国籍の人々とコミュニケーションを取る機会が増え、コミュニケーションの橋渡しの役割を担う、通訳が必要になる場面も多くなりました。しかし「実際にどのような手法で通訳が行われるか分からない」「シーンに合った通訳手法が分からない」という方も多いのではないでしょうか。

ビジネス通訳

商談、ネゴシエーション、現場での設備の試運転、機械、電機保守・メンテナンスなどの技術通訳など。

会議通訳

多国間対話の国際会議や商談など、ビジネスの場で行う通訳を指します。通訳市場において最も高いシェアを占め、最も高い通訳技術が必要とされます。
以下、3種類の会議通訳を紹介します。

1. サミットやシンポジウム等の国際会議での通訳

大規模なカンファレンスでの通訳業務を指します。政治家や専門家が話す内容を通訳する場面が多く、語学力に加えて高度な専門知識が求められます。重要な国際会議では、会議通訳者の中でもトップクラスの通訳者が業務にあたります。
通訳手法は「同時通訳」が最も多いですが、訳した言語からさらに他言語へ訳す「リレー通訳」をする場合もあります。

※リレー通訳とは

使用言語が3言語以上の場合に使用される通訳手法。例えば日本語・英語・韓国語を使う会議で、【日本語―英語】対応の通訳者と【日本語―韓国語】対応の通訳者が業務に当たった場合、英語の発言はまず日本語に訳出し、その日本語を聞いて韓国語に訳出され「英語→日本語→韓国語」の順で通訳が行われます。

2. 会議や商談等のビジネス通訳

企業や政府・官庁、産学官等、大小問わず様々な分野での通訳業務を指します。例えば日本と海外の議員同士の交流会や、日系企業と外資系企業の合併時の契約締結、あるいは外資系企業が行う新製品の記者発表会等、様々な場面があります。語学力はもちろん、職種や業種に応じた専門知識(専門用語、組織構造、事業の仕組みなど)が必要とされます。
通訳手法は、会議内容や人数に応じて「同時通訳」「逐次通訳」「ウィスパリング通訳」を使用します。

3. ニュースなどの放送通訳

海外のニュースを日本語に訳したり、日本語のニュースを外国語に訳したりします。事前に内容を確認した上で映像にあわせて行う「時差通訳」と、生放送の映像にあわせて行う「同時通訳」の2種類があります。
前述した国際会議での通訳やビジネス通訳と異なる点は、通訳を聞く対象が一般の視聴者という点です。正確な情報を、視聴者に分かりやすいように訳す必要があるため、情報処理能力と簡潔に表現できるスキル、また時間内に訳出を収めるスキルも必要になります。

司法通訳

外国人が関わる事件の捜査や取り調べ、裁判での通訳業務を指します。なかでも、裁判所で裁判官、検察官、弁護人、被告人や証人等の通訳をする人は「法廷通訳(人)」と呼ばれます。法廷通訳人は、裁判所が持つ通訳人候補者名簿から選任されるか、JCSのような通訳派遣会社を通じて手配されます。
裁判を起こした側と起こされた側のどちらにも偏らない、中立的な立場で訳す事が求められます。また、当然正確な通訳が求められ、特に判決に直接関わる法廷通訳の場合は、細部にまで徹底した正確性が求められます。そのため基本的に「逐次通訳」で行われます。

医療通訳

病院や調剤薬局などの医療現場で、外国人患者と医療関係者のコミュニケーションを取るための通訳です。患者の命が危険にさらされる可能性があるため、正確に症状を訳出する必要があります。そのため多くの場合「逐次通訳」が使われます。高い語学力はもちろんの事、医療の専門知識を備えることが不可欠です。また、重大な手術に立ち会う場面もあるため、大量の血や臓器をみても冷静に対応できることが求められます。

ガイド通訳

「通訳ガイド」や「通訳案内士」と呼ばれ、外国人を日本各地へ案内し、文化や伝統、生活習慣などについて外国語を使って紹介する通訳業務です。一般的な通訳と混同されがちですが「発言する内容を自分で考えなくてはならない」点が、他の通訳と性質が異なります。観光ガイドとしての役割も担うため、旅行会社と契約したり、フリーランスで直接仕事を受けたりします。

2018年1月4日施行の改正通訳案内士法の施行により、外国人を有料で案内する場合でも、国家資格である通訳案内士の資格は不要になりました。しかしながら、資格試験はまだ存在しており、合格率が10%程度の難関資格とされています。

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