キン族の母語

キン族（ベト族とも言う）の母語がベトナム語であり、ベトナムの公用語です。

アルファベット表記

ベトナム語は、西洋のカトリック宣教師たちの活動やフランス植民地を経て、アルファベット表記のベトナム語が公式の文字となりました。アルファベットの上下に「声調記号」や「母音記号」をつけて表記します。F、J、W、Zの4文字はなく、DのほかにĐがあります。

昔は漢字を使用

1000年以上におよぶ中国支配の影響で、長い間ベトナムの公式の文字は漢字でした。10世紀ごろにはベトナムで誕生したチュノム（chữ Nôm）という独自の漢字もありましたが、普及しませんでした。
が、漢字の影響で、今でもベトナム語の語彙の約6割は漢字に置き換えられ、日本語と似た音も多数存在します。

6つの声調

ベトナム語は、6つの声調（ngang, huyền, sắc, hỏi, ngã, nặng）があり、声調によって意味が変わるという特徴があります。また、母音や子音の発音にも独自のルールがあります。

12の母音

• a: /a/ と発音され、”a” が独立した音節を形成する場合や、語の最後の音素として現れる場合に用いられます。
• ă: /ə/ と発音され、日本語でいう「あ」に近い音で、短い母音として用いられます。
• â: /ə̂/ と発音され、日本語でいう「あ」と「え」の中間の音で、長い母音として用いられます。
• e: /ɛ/ と発音され、日本語でいう「え」に近い音で、”ê” が独立した音節を形成する場合や、語の最後の音素として現れる場合に用いられます。
• ê: /e/ と発音され、日本語でいう「え」と「い」の中間の音で、長い母音として用いられます。
• i: /i/ と発音され、日本語でいう「い」に近い音で、”y” が独立した音節を形成する場合や、語の最後の音素として現れる場合に用いられます。
• o: /ɔ/ と発音され、日本語でいう「お」に近い音で、”ô” が独立した音節を形成する場合や、語の最後の音素として現れる場合に用いられます。
• ô: /o/ と発音され、日本語でいう「お」と「う」の中間の音で、長い母音として用いられます。
• u: /u/ と発音され、日本語でいう「う」に近い音で、”ư” が独立した音節を形成する場合や、語の最後の音素として現れる場合に用いられます。
• ư: /ɯ/ と発音され、日本語にはない音で、”u” と同様に用いられます。

子音について

• b: /b/
• c: /k/ または /ʈʂ/ （huyền・sắc・ngã・nặngの場合）
• d: /z/ または /j/ （ngãの場合）
• đ: /ɗ

文法はSVO

文法は基本的には英語と同じで、【主語＋動詞＋目的語】の形をとります。

また、文法は大変シンプルで、名詞あるいは動詞でも単語が一切変化しません。
例えば動詞では、その文の主語が単数か複数か、一人称か二人称か三人称かによって後に続く動詞が変わることもなければ、動詞の過去形・未来形といった変化もありません。過去や未来を表したいときには、単語を追加します。

フランス語の影響

ベトナムは長年にわたってフランスの植民地支配を受けたため、ベトナム語には多くのフランス語の影響が見られます。以下に、主な例をいくつか挙げます。

語彙：ベトナム語には多くのフランス語の単語が取り入れられています。例えば、”bút”（鉛筆）や “sô cô la”（チョコレート）などがあります。

文法：フランス語と同様に、ベトナム語にも定冠詞があります。ベトナム語の定冠詞 “cái” や “chiếc” は、フランス語の “le” や “la” に似ています。

発音：フランス語と同様に、ベトナム語にも鼻音があります。ベトナム語の “ng” 音は、フランス語の “gn” 音に似ています。

文化：フランスの影響により、ベトナムの料理にはフランス料理の影響が見られます。例えば、ベトナムのバゲットサンド “bánh mì” は、フランスのパン “baguette” を元にしています。

その他、いくつかの例を以下に示します。

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